演劇ワークショップ2日目 現地の人に聞き書きインタビュー(Kei)

ワークショップ2日目、僕はイフガオに来て4日目になります。お天気が続き、気持ち良い1日の始まりでした。この日は現地に住む方々にインタビューをしにいきます。インタビューを受けるインフォーマントの方々は、事前に現地の文化、風土、暮らし、社会、人に詳しいアドバイザーさんが調査し聞き書きの了承をいただいている人の中から、先生たちが興味のある分野ごとに振り分けました。各グループ、二人ずつにインタビューに行くこととなりました。
僕もインタビューに同行させていただきました。僕のグループでは同じ地域で同じ稲作をしているのに環境が全く異なる2人を取材しました。
まず初めに取材をしたのは、フンドアン町ハパオで最も忙しいビジネス・ウーマンのエスターさんという方。彼女は世界遺産の棚田のお米、伝統的な技術で生産した棚田のお米をブランド化し、世界各地に輸出をしているイフガオの人々の中ではかなり先駆的な女性です。他にも色々な事業やNGOを手掛けているスーパー忙しいウーマン。
インタビュー中は英語やイフガオの言葉が入り混じりほとんど何を言っているかわからなかったのですが、あとで教えてもらいざっくりですが理解することができました。
ビジネス・ウーマンのエスターさんは棚田で取れたお米をあえてブランド化することで棚田を守っていると言います。世界遺産の棚田であっても伝統的な技術や手法をとらなければ本当の意味でイフガオのお米と言えない。昔ながらのやり方で、時間とお金をかけて一からお米を作っている。そうすることでブランド化されるだけでなく、雇用も生まれ、しっかりと人の手が入ることで棚田の伝統と棚田そのものを維持できるということでした。

エスターさんに続いてインタビューをしたのは代々ハパオで農家として暮らしてきたルイスさん。ルイスさんは昔ながらの農家さんでした。しかし、最近は若者が都会へ流れてしまって深刻な人材(彼はしきりにラック・オブ・マンパワーと言っていました。)の不足で困っているということでした。人手が足りない上に最近では害虫も多い。機械化と化学肥料に頼らざるを得ないと言います。それでも手が回らず、中には田んぼを維持できずに放棄する人もいるそうです。また自分たちの田んぼを持っていると言っても収穫量は小さく、家族を十分に養うことができません。田んぼだけではなく、野菜を作ったり、ガイドをしたり、運転手をしたり、修理屋さんをしたり、木彫りをしたり、一人でいくつもの職業を掛け持ちしないとその日を凌ぐだけの食べ物やお金を生み出すことができないとのことでした。そんなに苦しいならエスターさんに協力してもらったら良いのではないか、と言いたくなるのですが、本来イフガオの人々にとってお米は代々受け継いできた魂のようなもので、誰かに売ったり、値段をつけたりすることは考えられないもので、エスターさんたちのやっていることは理解できるんだけども、その自分たちの魂を売る気にはなれないし、エスターさんのやっていることはハパオでも賛否両論の難しいところなのだそうです。

魂であるお米を売って棚田を守っているエスターさん、魂を守って棚田を傷つけているルイスさん。日本でも似たような葛藤に苦しむ農家の方はいらっしゃると思います。棚田だけでなくいろんなところで環境問題があり、メディアなどを通して得られた限られた情報だけだと「そんなこと、こうすればいいのに」と簡単に思ってしまいがちですが、こうやって直接現地の人に会い生の声を聞くことで一筋縄ではいかないことがわかるし、その人の思いを受け取ることになります。どっちか一方でなくどちらもうまく両立させる方法はないのか考えたくなってしまいます。でも本当に難しい問題です。
午後はキャンパスに戻り、それぞれのインタビューで聞いてきたことをマニラペーパー(模造紙)にまとめ発表します。さすが先生たちでものすごく上手にわかりやすくまとめていらっしゃいました。僕たち以外の二つのグループは伝統的な祭祀、棚田の観光というテーマでインタビューをしていたそうです。どちらも深い問題があるようでインタビューをしていた先生たちの声に熱がこもります。まるで自分が当事者であるかのようにインタビュー内容や聞いてきたことを熱弁します。
一通りシェアリング(共有)が終わると今度はそのインタビュー内容をモノローグへ落とし込みます。が、もうすでに5時半をすぎ、暗くなってきたのでこれは宿題になりました。今日の締めに、モノローグの例として、フィリピン人ジュニア・ファシリテーターたちが以前自分たちが作ったモノローグの朗読をしました。彼らはすごくやんちゃな若者って感じで普段とっても元気でみんなを盛り上げてくれているのですが、いざ役が入ったりこう言ったモノローグを読む機会がやってくるとスッと別の人格になったように集中して役に入ります。本当にすごいなぁと思います。僕は演劇経験はゼロだし、人前で何かを演じるとなったらそうとうエネルギーが必要で、何度も決心しないと無理だなぁと思ってしまいますが、彼らは本当にスッと自然に入っていて、いつか自分もそんな殻を破れるようになりたいと思わされました。
こうして2日目が終わりました。3日目はいよいよ、物語の構成を作り始めます。インタビューで得た情報がどのように台本に生かされるのでしょうか。楽しみです!

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ

~青少年を対象とする環境問題をテーマとした演劇交流事業~

事業実施団体:コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)/総合地球環境学研究所

助成:国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造協働助成 / トヨタ財団 国際助成

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク インターン体験ブログ

フィリピン・ルソン島北部のバギオを拠点に、コーディリエラ山岳地方で活動する環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)の日本人インターンによるブログです。活動紹介のホームページはhttps://cordigreen.jimdo.com。以前のインターン体験ブログはこちらameblo.jp/cordillera/。問い合わせはcordigreen(a)gmail.comまで。